こんにちは、ファイナンシャルプランナーのえじりです。
「FPえじりのお金教室」は、みなさまのよくあるお金の悩みに、FPのえじりがお答えするコーナーです。記念すべき第1回は、いちばん多くいただく「そもそも」のご質問から始めます。
目次
今回のご相談
さちこさん(47歳・パート)・けんじさん(49歳・会社員)ご夫婦からのご相談
妻・さちこさん:共働きなので、世帯収入はそれなりにあるはずなのに、なぜかお金が貯まらないんです。私も家計簿を何度か始めたのですが、入力が面倒でいつも3日坊主になってしまって…。
夫・けんじさん:私は正直、お金のことは妻に任せきりで「きっと貯めてくれているだろう」と思っていました。でも先日、貯金額を聞いて愕然としまして…。お互い相手が管理していると思い込んでいたんです。そもそも、家計管理ってそんなに必要なものなんでしょうか?
結論:家計管理は「人生の選択肢を増やすための地図」です
さちこさん、けんじさん、ご相談ありがとうございます。結論から申し上げると、家計管理は「自分の望む人生をつくっていくための地図」です。私はこれを「人生クリエイト」と呼んでいます。
突然ですが、ひとつ質問させてください。
「経理部のない会社に、入りたいですか?」
儲かっているのか、つぶれそうなのかも分からない会社には、誰も入りたくないですよね。ところが家計になると、多くのご家庭がまさにその状態になってしまっているのです。自分の人生を、ひとつの会社のように「経営していく」という視点を持っていただきたい。その第一歩が家計管理です。
「貯まらない」理由は、実はシンプルです
貯蓄の方程式は、中学生の家庭科の教科書に書いてあったシンプルな式です。
「収入 − 支出 = 貯蓄」

当たり前ですが、収入が支出より多ければ貯まり、少なければ貯まりません。それだけです。イメージはお風呂です。蛇口から入る「収入」より、排水口から出ていく「支出」が多ければ、お風呂(貯金)はいつまでもいっぱいになりません。逆に、入ってくる量より出ていく量を少なく保てば、お湯(貯金)は自然とたまっていきます。
多くの方は「収入を増やさないと貯まらない」と考えがちですが、実はコントロールしやすいのは支出のほうです。そして家計管理は、この「支出をコントロールする」ための唯一の入り口です。お得術や節約をどれだけ頑張っても、支出全体が見えていなければ、ザルで水をすくうようなものなのです。
さらに大事なのは、人生には事前に分かっている大きな支出の波があるということです。結婚、出産、住宅購入、子どもの教育、そして老後。たとえば子ども1人の教育費は1,000万円規模かかると言われます。これらは「ある日突然」来るのではなく、あらかじめ分かっている未来です。家計の「現在地」を知っていれば、逆算して備えられます。
共働きで「なぜか貯まらない」の正体
お二人のように、共働きで世帯収入がそこそこあっても「なぜか貯まらない」というご相談は、FPの現場でとても多くいただきます。そして、けんじさんの「妻に任せきりだった」、さちこさんの「夫も貯めているはず」という“おたがいさま”のすれ違いこそ、いちばんよくあるパターンなんです。
理由はシンプルで、お互いがいくら使っているか把握できていないからです。「相手も貯めているだろう」とお互いが思っていて、フタを開けたら世帯全体ではほとんど貯蓄ゼロ、というケースは珍しくありません。
家計管理をしていれば、「教育費のピークが10年後に来る」「それまでに毎月いくら積み立てれば間に合う」と逆算できます。把握していないと、ピークが来てから慌てて教育ローンに頼ることになります。同じ収入でも、管理しているかどうかで未来が変わるのです。
共働き家計の難しさは、複数の収入と複数の財布が存在することにあります。世帯収入がある程度高くなる反面、その分だけ支出も増えやすい構造になっています。さらに、お互いに具体的な収入額や資産を教え合っていないご夫婦も少なくありません。この「複数財布の複雑さ」が、共働き家計の見えにくさの正体です。
私はこの問題を解決するヒントをまとめた著書『お金が貯まる!世帯年収500万円から始める共働き夫婦の超効率家計簿』(徳間書店)を出版しました。世帯収入が高いご家庭ほど「管理さえできれば一気に貯まる」ポテンシャルがあります。
今日からできる、最初の一歩
お金は「つける(記録する)→ ためる → ふやす」という順番で育っていきます。最初の「つける」がないといったいいくら入ってきて、いくら出ているのかがわからない。その状況で、貯蓄は増えていかないので、いきなり投資を始めてもうまくいきません。

3つのステップを整理すると、こうなります。Step1「つける」=支出と収入を把握する。Step2「ためる」=現状を見て、ムダな支出を改善して貯める。Step3「ふやす」=貯めた貯蓄をもとに資産を増やす。この順番を守ることで、収支の透明性が生まれ、効率的な資産形成につながっていきます。お二人のような共働き世帯も、まずは「つける」で家計の現在地をそろえるところからです。
実はこの「つける → ためる → ふやす」は、私がファイナンシャルプランナーとして数多くの家計を見てきた中でたどり着いた、FPえじりオリジナルの3ステップです。むずかしい知識はいりません。シンプルで分かりやすく、この順番どおりに続ければ、家計は必ず良くなっていきます。それぞれのステップの具体的なやり方は、この「FPえじりのお金教室」で、これから1つずつ詳しくご紹介していきます。
まずやることは、たったひとつ。使ったお金を記録する。これだけです。
記録していない状態は、収入も支出も収支も分かっていない状態です。改善点が分からないので、いつまでも変えられません。逆に、記録して「認識していなかった支出に気づく」だけで、人は自然と支出を減らし始めます。これが、家計簿が最強である理由です。
おカネレコでの実践方法
「家計簿が3日坊主になる」最大の原因は、入力が面倒なことです。おカネレコは最速2タップ・約2秒で記録が完了するので、挫折の原因である「入力の負担」そのものを小さくできます。
まずは金額とカテゴリだけ、ざっくりでかまいません。1円単位で合わせる必要はなく、「全体が見える」ことが目的です。1か月続けるだけで、「認識していなかった支出」がきっと見つかります。
まとめ
家計管理は、節約のための我慢ではなく、自分の人生の選択肢を増やすための地図です。「収入 − 支出 = 貯蓄」というシンプルな式の「支出」を見えるようにすること。それが人生クリエイトの第一歩です。
回答者プロフィール
江尻 尚平(えじり しょうへい)
スマートアイデア株式会社 代表取締役/ファイナンシャルプランナー
上智大学理工学部卒業。大手外資系携帯電話メーカーにてサービス企画などに従事したのち、慶應義塾大学大学院経営管理研究科にて経営学修士(MBA)を取得。2012年にスマートアイデア株式会社を創業、代表取締役に就任。
現在、500万ダウンロードを達成した家計簿アプリ「おカネレコ」、家族向け家計簿「おカネレコプラス」、FPオンライン相談サービス「マネシル」など、Fintech分野に注力した事業を展開している。2015年にはベトナム・ハノイにスマートアイデア・スタジオを設立し、国際的な事業構築も実践。
ファイナンシャルプランナーとして、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」などに出演し、家計に関わるコメントを行う。著書に『お金が貯まる!世帯年収500万円から始める共働き夫婦の超効率家計簿』(徳間書店)がある。
※ご相談内容は、おカネレコユーザーのみなさまから多く寄せられる声をもとに構成しています。



